理事長コラム|文京区本郷・渋谷区原宿のえのき歯科クリニック

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陰と陽

「陰と陽」

「陰と陽」

中国では古来より太陽を背に日のあたる側を陽、影になる側を陰とし、以来ものごとには陰と陽の二つの側面がある。という考え方があります。(あれ?ちがったっけか?)
一般的に歯科医っていうと「お金持ち」って皆様思うらしいです。
知らない人には無理もない話だと思います。

確かに本来、歯科治療は「お金持ち」しか受けられない治療でした。(アメリカは今でもそうです。)
金属だって今の代用合金ができるまでは金のみだったそうです。今は・・・・。どうなのでしょう?先ず歯科医になるには専門の歯科大学に合格しないといけません。
そして想像を絶する厳しい6年間を過ごします。(ぼくの学生の頃は6年間無遅刻、無欠席は当然、ちょっとでもさぼると即落第候補、普通にしていても毎年、成績が下から10%程の人が自動的に落第します。

同級生の顔ぶれが毎年変わっていきます。今はそうでもないらしいですが・・・)そして試験に次ぐ試験、実技試験に次ぐ実技試験、かんじとして30年程前の 自動車教習所を100倍厳しくしたくらい(教官の態度を含めて。あくまでぼくの学生の頃です・・・)をイメージしてください。そして臨床実習、卒業試験に合格すると、どうにか卒業する事が出来ます。そのうえで国家試験に合格して初めて歯科医師となれるのです。
そして国に(正確には社会保険事務所ですが)保険医登録をして、ついに保険治療が行えるようになります。ここで皆様、及び新卒のドクターは大きな勘違いを するのです。そうです。何もしなくても歯科医ではない同じ年の人より多くの収入が保証されるくらいの気持ちになってしまうのです。

確かに国が認めた専門大学に受験し合格し、国の定めたカリキュラムを消化し習得し、さらに国の定めた国家試験に合格し、国の規定に沿って登録をするのですから。
そのうえ保険診療に関してはガイドラインまで決まっており、それにのっとって治療を行ない、なおかつ営利を目的に治療を行う事は固く禁じられています。あたかも国家公務員の端くれのように思っても仕方のない事だと思います。

ところがぼくらは経済的な保証はまったくされていません。歯科医だというだけでは国から1円ももらえません。ボーナスはおろか、もちろん退職金も出ません。
保険で治療を行っていれば、悪い表現ですが「取りっぱぐれがない」という事のみです。
それとて保険診療報酬は近年、2年ごとくらいに下がってきています。(・・・いざなぎ景気で好景気だったはずじゃ?)ちなみに現在の歯科の再診料は38点 です。(それでも単体で見ると以前より上がっています。でも内容包括が増えた気もします)380円!(やっと400円になりました(泣))です。医科の平 均より約千円近く低く設定されています。
1時間近く治療して材料だなんだと経費をうんと費やして、その時の治療内容としては380円だけ、という事もあります。(今時、立ち食いそばでも・・・、座らせてもくれないし。

いずれにしてもファーストフードのレベルですね)一部負担金3割で110円です。(缶ジュースも買えません・・・)内容によっては、例えば親知らずの抜歯 等は30年程前と同じ値段らしいです。(信じられる?)そのため先日、週刊誌で報じられたように歯科医の初任給12万円、ワーキングプアーの時代といわれ るのです。

当然です。現在はどんなに時間を費やしても逆に出て行く経費の方が上回っている事が非常に多くなっているからです。タクシーの初乗りでさえ660円でしたか?ぼくらの経費の高さはタクシーの比ではありません。本当に一般常識からすると恐ろしい程です。

つい先日もユニット(診療台です)のホース(ビニールだかシリコンだかの長さ2メートル未満、直径5ミリ程の細いホースです)が切れたのですが、新品で2 万8千円、修理で約1万4千円だそうです・・・。(ネットでなんでも原価のわかるこの時代にこんなショボいホースが?金魚飼育セットに付いていそうなこれ が?まじで?・・・どこかの人間国宝の職人さんが時間をかけて手作りしているのだろうか?)すべてが万事この調子です。

昔の歯医者さんが差額徴収の時代にさんざん儲かって、その時にドーンと歯医者さんを基点とした逆ピラミッドのシステムが出来上がり、それが今もガッチリとのしかかっているから起こる恐ろしい話です。

以前どこかの偉い方がおっしゃっておられた、「三者一両損」というのも初めて聞いた時に「うーむ・・・、スゲー!」と思いました。医者は病気にもならず、 病院にも行かず、保険料も払っていなければ、一部負担金も払ってないと思われているのでしょうね。(・・・人間か?)正確には「三者医者が一番損」で す。・・・非常に悲しくなります。
そうこうしている間に経費は毎年物価の上昇とともに容赦なく恐ろしい程着実に増えていきます。
このままでは今の若い子達が歯科医をやらなくなるのは当然だと思います。もちろんしっかり歯科医としてプロ意識を持って毎日を過ごしている方もいますが、 なんというか・・・。ニートみたいになっている方や、体調をくずされて仕事をしていない方が以前に比べて非常に多い様に感じます。
今の歯科界の制度では当然な気もします。(一方では週に何日かだけ歯医者をやってるけど、ミュージシャンや、フィギュアスケートの審判や、自分のファッ ションブランドを立ち上げちゃう人とか、いろんな方面でも活躍している非常に多才な方も出現しています)すると数年後はどうなっているでしょうか?「免許 はあるけど、バカらしくて歯医者はやりたくない。

仕事の内容の割にはお金が安すぎて生活できない。どうせ儲からないなら自分の好きな仕事だけしたい。」極論すると、そうなるのでしょうか?現在あちこちに ある街の歯医者さんは当然かなり数が少なくなっている事でしょう。その時に患者さん達はどうなるのでしょうか?生き残っている歯医者さんに行けばいい?そ うでしょうか?今までの非常に優れたシステム、日本が世界に誇る「国民皆保険」によってどれだけ多くの大切な歯が守られた事でしょう。(今さらですが、永 久歯は各1本ずつしか生えません。失ったらそこにはもう何も出て来ません。サメじゃないんだからさ・・・)医療改革?によってすごくいやな時代が来そうな 気がします。本来、歯科治療の必要な方が諸事情により通院できない。

それによって予想される事はもう考えたくもありません。ぼくらがどんなにがんばっても治療の必要な人が来てくれなくては病状は悪化する以外にないのです。
歯の治療は(特に硬組織の修復は)風邪等とは違い通常1回治せばそうそう悪くなるものではありません。
皆さん是非1度、最寄の歯医者さんに行っていください。「自信のある方」もです。もし手遅れになると大切な長年苦楽をともにしてきた愛着のあるご自分の歯 を抜いて、それこそ最近ではアゴの骨にドリルで穴を開けて直接骨の中にネジを打ち込み、口の中に突き出したところに人口の歯をつけるインプラントという究 極の選択が堂々と登場します。

あくまで歯ではありません。アゴの骨に直接打ち込んだネジです。失った歯をもとどうりにする魔法の治療では決してありません。 しかも日本ではまだまだ値段も高いようです。(聞いた話ではNYでは、もはや15万くらいらしいです!安!!)